こんにちは、こーんです。
町山智浩さんの著書「今のアメリカを知る映画100本」を読みながらHuluやAmazonプライム・ビデオから見放題で観られる作品をチョイスしてます。
今回観たのは「ダラス・バイヤーズクラブ」。
主演のマシュー・マコノヒーは17キロも減量して挑んだ作品ということでHIVに感染したガリガリのカウボーイを演じています。
全然顔が違うなぁ〜。役者ってすごいな。
マシュー・マコノヒー - Wikipedia
一部ネタバレを含みますが実話を元にしているのと作品性を考慮してご判断ください。
AZTなる薬。
主人公のロンはロデオを愛する電気技師。ある日の病院でHIVの感染が発覚してしまうのですが、同性愛者でもなく麻薬常習者でもなく普通に女性との性交渉が原因でした。
当時の時代設定ではエイズは死の病であり同性愛者が感染するものという偏見があり、周りからゲイだと揶揄されます。
そんななか病院でAZT(アジドチミジン)の臨床試験が始まり一部の被験者のみに投与されている事実を知るのですが、メキシコの闇医者からAZTより効くペプチドTの存在を知ります。
アメリカでは薬の使用についてアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認がないと使用が認められないという規制がありました。
HIVに効くと分かっていても使用が認められない新薬の難しいところ。新薬はおろかAZTですらまだ臨床試験段階。
ロンはHIVキャリアでありながら臨床試験もさせてもらえないただ死を待つだけの患者でしたから他人事ではありません。死んでたまるかとすぐに「ペプチドT」やビタミン剤などHIVに効くされる薬の売人をはじめます。
余命30日のはずが。
ロンは特効薬のおかげで延命だけでなく健康的な生活と体を手に入れて心から生き生きとしてきます。
HIVは免疫力や抵抗力が著しく低下するため次第に身体がむしばまれていくもののその発症さえ抑えられれば戦える病気であると抗HIV薬が教えてくれたんです。
しかしそれを国が認めない。
製薬会社とFDAまたは製薬会社と病院との癒着がそれを妨げる医療ビジネスの闇。
ロンはいちど失った命。何もしなければただ死んでいくだけですからまさに背水の陣のごとくまるで麻薬ディーラーのように薬を売りさばいていきます。やがてロンと同じ立場の多くの患者の希望となっていきます。
トランスジェンダーのビジネスパートナーレイヨン。
ロンが病院でAZTの薬をくすねようと画策しているときにAZT臨床試験の被験者のレイヨンと知り合います。
ロンはコテコテのカウボーイ肌、同性愛者をひどく嫌っていたのでレイヨンを軽蔑しますがいつしか同じ病気を患う仲間として、そしてレイヨンも病院のAZTの治療では治らないと悟ったのかロンとの治療薬のビジネスパートナーとしてタッグを組んでいきます。
とくにHIV患者の多くが同性愛者ということもありレイヨンのコネクションで瞬く間にビジネスが拡大していくのです。
しかし自由奔放に見えて真面目なロンと、マイノリティでありながら自らを解き放とうと少し危なげなレイヨン。互いに残された時間があるなかで互いを軽蔑しながらも本当は尊敬している不思議な関係性がアメリカの人種だけでなくLGBTなど現代の複雑な個性を尊重し受け入れる現実社会の縮図を見させられているようでした。
最後は死ぬ気だ。
違法と分かっていても麻薬を売っているわけではない。むしろ健康薬品やサプリメントを売ってる。自分は金儲けのためにやっているのではなく自分の病気を腐敗した病院ではなく自分で治そうとしているだけだ。整理すればこうだ。
藁にもすがる思いは医者にもFDAにも分からない。HIVにかかって限りある命の宣告をされたものにしか分からないのです。
文字通り死ぬ気になったら何でもできるわけです。そしてよ自分もマイノリティの立場になって気がつくことがあるわけです。
一体何なんだというアレやコレ。
ロンは理不尽が命のてんびんにかけられて正義に素直に心を傾けて国やFDAと戦ったんですね。
企業勤めをしていると社内の手続きや利益に結びつかない決まりやら色んなことがあります。
意味あんのかこれ。こんなことしてるから効率が悪いんじゃないか。働き方改革?笑わせるな!なんてことはしょっちゅう。
誰の命に関わるわけではないのでロンのようにはなれませんけどね。会社員の悲しいところ。
ただ正しいと自分の中で思ったことを行動に移して、体だけでなくクレバーに。
最後はロンと自分がほんのちょっとだけ成長したと思える作品でした。